2025/01/17 21:07
この本は、どうすれば言葉で思いを相手に伝えられるようになるかを教えてくれる一冊だ。
驚いたのは、本書が文法やテクニックではなく、「自分の音」にフォーカスしている点である。
自分の音とはなんだろうか。
それは自分自身の内側にある、汲めども尽きせぬエモーショナルな源泉だ。
だから、この本で説かれるのは文章の書き方というよりかは、自分自身の内側にある言葉の歌い方なのだ。
言葉は音楽であるという著者の指摘に、そうか自分が今まで本を読み、心地いいなと思ってきた文章たちが実は歌だったのだと気付かされた。著者は、詩や小説、絵本、エッセイといったジャンルの読み物はリズムが重要だと指摘し、リズムや響きが良い文章しか残ってこなかったと大胆な仮説を立てる。著者が日本古来のリズムを探求する情熱はとどまるところを知らず、日本各地の奇祭に足を運び、実際に、歌い、踊りながら考えるのだ。そして、なぜ日本特有のビートは、「7・5調」なのかの一説にたどりつく。
その上で、著者が読者に伝えるのが、「自分の音を鳴らす」方法だ。
なぜ、私たちは自分の音を出しにくくなっているのかを問い、それを取り戻し、鍛える方法を届ける。
それは心の隙間にすっと届く、著者が独自に発見した文章術でもある。
こうした独自の文章術の源泉は、著者が作詞家であること、そして元「チャットモンチー」のドラマーだった過去に由来している。
もちろん、この本の魅力はそれだけではない。本そのもの自体にも随所に工夫が仕掛けられている。
ビジネス書のテーマカラーでもある「青」を基調としながら、それを全面には押し出さない。
あくまで柔らかい色にアレンジして柔らかい音を出している。その上さらに、章ごとにコラムをはさみ、内容と紙の色をシンクロさせるという離れ技に加え、フォントすらも変えてしまう。これは言ってしまえば、文章と紙とデザインのセッションだ。
カラフルなページをめくるのが嬉しいだけではない。夏目漱石の小説『こころ』やCoccoのエッセイ『想い事。』、角野栄子の絵本『ハンバーグつくろうよ』など著者が収集した、「いい音がする文章」の実例が多数掲載されているので、書かれた文章そのものを朗読すれば、実際にいい音がする文章を身体全体で味わうことができる仕掛けになっているのだ。
つまり、頭の中で音を鳴らすだけではもったいない本なのだ。音読しながら読んで、著者自身の音を丸ごと味わいたい。
できれば本は本屋で手にとって買ってもらいたいのだが、
【Amazon.co.jp 限定】『いい音がする文章 あなたの感性が爆発する書き方』
には、ダウンロード特典:「いい音がする名作」の朗読24分がついている。
実際に、読むだけではなく、著者の音が聞こえる本だ。